ROUND5 IN EBISU

D1グランプリもシリーズを折り返しての第5戦。
ドリフトの聖地「エビス南コース」に、ツワモノドモが集う。
このサーキット、観客席からコースの全景を見渡すことができるため、D1を味わうには最適。
夏の日差しと秋の風が交わる観戦日和に、多くのファンが詰めかけた。
予選エントリー65台からベスト20へ、そして頂点を目指し、壮絶な生き残り合戦が始まる。
COURSE POINT - ポイント
最終コーナーを95km/hオーバーで抜けて、ストレートを下りながらの第1コーナー、審査員席前を駆け抜け、第2コーナーから第3コーナーへと続く。振り替えしてからは上りながら最終の第4コーナーへ。
アップダウンが激しく、道幅も狭く、そしてコーナーが連続するこのコース、最後まで息切れせずに走りきれるかが、明暗を分ける。
さらに観客を沸かせる演出というか、ドライバーを苦しませる罠がコース上に潜んでいる。
まずは進入。カウンターを開始するや否や、車輌を上下に揺さぶるうねりに遭遇する。暴れるマシンを押さえ込んだ時のシルエットはトリハダもの。直後、1コーナーへのアプローチラインに迫るコンクリートウォールを数センチ残してアーチを描く。ここまでのリズムに狂いが生じると、次のステージへは行けないことになる。
そして1コーナーから2コーナーへのアウトライン。審査員席前でもあるこのゾーンはダイナミックに攻めたい。が、ここに描かれている縁石はスリッピー。流されてしまうと、2コーナーでの評価は望めない。
もうひとつ、ここは個人的に注目していた「地味な」罠だが、第4コーナーの出口。1~3コーナーで散々振り回した
後の、上りながらの加速。戻ろうとするドリフトを強引にアウトまで飛ばさなくてはならない。
THE DRIVER - 注目選手

手塚選手、小師選手と共に予選通過を指定席にした感のあるバジン1 号、時田選手。
コワイんだかカワイイんだか判らないキャラクターの彼が駆る愛車ソアラ(MZ12)は、
審査委員長から「昭和のクルマ」と、愛情たっぷりのニックネームを授かる。
そんな愛されキャラの時田選手はファンにも優しい。
予選経過
今回はGOODYEARサポート全車10台がエントリー。ミスなしで走って99.9点、そこに進入速度95km/hオーバーが加わって100点。助走区間が短く、1コーナーまでを下るコースレイアウトでの95km/hは1コーナーまでのライン取りの上手さと、相当の勇気を必要とする。
手塚選手、1本目で余裕の合格ラインに乗せ、2本目、3本目と「攻め」に転じた走りを披露。3本目では1コーナーでスピンしてしまったが、これはご愛嬌。
時田選手が速い。進入99km/hで審査員からも賞賛の声が。今日は「昭和のクルマ」ではなく「このボロソアラが!・・・」と、審査員も驚きを隠せない。
吉川選手、どうも波に乗れない。1コーナーでのカクが目立ち2コーナー進入でクリップに付けない。3本とも同じラインで同じ現象。苦しい予選となった。
小師選手は安定感抜群。2本目98km/h、3本目99km/hと、完全に戦闘モード。手塚選手同様、3本目ではスピンしてしまったが、予選通過を早々と決めたあとの余裕だと言えよう。
Aグループ11台の予選走行を終えた時点で、それは全員通過と言いたくなるほどのレベル。99.9点だったとしても予選通過を約束できないのかもしれない。
高橋選手、ここエビスからニューマシンを投入してきた高橋選手。直前テストでブローさせてしまったエンジンはノーマルを積むも、軽量化に力を入れた車輌に期待がかかる。
1本目、まずまずの走りだが3コーナーのクリップを外してしまった。2本目では1コーナー進入と最終コーナーで戻りが出てしまい、ギクシャクした走り。3本目は進入96kmからスムーズなライントレースで綺麗にまとめ、予選通過ボーダーラインか。


戸ヶ崎選手。最終コーナーからスタンド前のストレートでの振り出しが遅くなる「奥目」のライン取り。非力な86で苦渋の選択なのか、豪快さを削ぐ。相性が悪いのか、今日は乗れていない。
松田選手。戸ヶ崎選手と同じくAE86なのだがこちらは特攻型。危険を感じるほどの1コーナー進入速度でアウトラインいっぱい。 観客席に轟音を残してアピール。2本目、1本目とは対照的にやや大人しい走り。3本目では再び攻めてきたが、最終コーナーまで息が続かなかった。
村山選手、最終コーナーのカウンター後、例のうねりに足を取られコンクリートウォールに接触。1本目は中止。2本目も同じ場所で振られてしまい、ラインをなぞれない。 3本目では纏まりのある走りで完走したが、ハイレベルで争われるエビス、通過ラインには届かないか。
中澤選手も村山選手同様、進入のうねりで車体が振られ、ウォールに激しくヒット。そのままの勢いで2回転のスピン、観客席から上がる悲鳴の中、審査員席前のスポンジに激突してしまった。フロントバンパーを失うも走行に問題はなく、コース復帰したものの、2本目、3本目とモドリ、クリップに苦しみ撃沈。


星野選手。進入のうねりで車体を浮かせてしまいモドリ。角度、スピードも十分で格好いい挙動だっただけに惜しい結果となった。

結局、予選通過20台中15台が99.9点、99.8点を叩き出した選手でさえ通過できないという、壮絶な戦い。 グッドイヤー勢の通過は、時田選手の7位通過を筆頭に、小師、手塚の3選手となった。


1回戦 単走

予選結果を踏まえると、99.9点でも確約の取れない戦い。ワンミス=即敗退。そんな中、完璧な走りを魅せてくれたのが、手塚選手。コース幅いっぱいに振り回しながら、まさに「カッコイイ」走り。これは間違いなくベスト16進出。

時田選手の走りも十分にダイナミックだったのだが、僅かなクリッピングミスも許されそうにない。案の定、99.8点を獲得しながらも、無念の敗退となった。
朝の練習走行からやや気になったのが小師選手。昨日から一転、進入のカウンターが決まらず、突っ込みがちな走りが目立った。本戦でもその症状は修正されず、苦い結果に終わった

追走トーナメント
昨年のエビスでは、堂々の3位入賞を果たしている手塚選手。 チームメカニックも万全のマシンコンディションで、表情も明るい。何かを起こすかもしれない・・・期待が高まる。
ベスト16
C35を駆る春山隆選手との1本目、後追いスタートの手塚選手は落ち着いた走りで春山選手を追撃、3コーナー出口ではインを突かんばかりに煽り立てる。しかしここは春山選手も食いさがり、ドロー。 続く2本目、先行の手塚選手はマシンを豪快に振り回し春山選手を圧倒、リズムを失った春山選手はカウンターが戻り、8:2で手塚選手は余裕の初戦突破を果たした。


ベスト8
ベスト8の対戦相手はS15の川畑真人選手。
1本目、後追いの手塚選手は進入から深い角度で直線的なライン。一方の川畑選手はやや浅めのカウンターから弧を描くライン取り。1コーナー進入手 前で互いのラインが交錯、前を塞がれてしまった手塚選手はフルブレーキで前輪ロック、コントロールを失いそのままバリアに激突・・・悪夢の0:10。幸いダメージもなく、審査員席に一礼する余裕を見せる手塚選手。が、0:10。



フロントバンパーに応急処置を施した手塚選手は無事グリッドに戻り、フルフェイス越しにまたも余裕の表情を浮かべた。



崖っぷちの2本目、ドラマの幕開け。無理をせずともベスト4目前の川畑選手。だが、そうはさせなかった手塚選手の執念か、1コーナーから並びかけてきた川畑選手がスピン。影響なく走りきった手塚選手が今度は10:0。サドンデス! 勝利の女神はまだ見放していなかった!

サドンデス1回目、1回目と書くには訳がある。そう、このあと4回ものサドンデスを重ねることになるのだ。その1回目、互いに譲らず互角の戦い。2回目も、3回目も、それはまるで単走の如く、たとえ相手のマシンにヒットしても、各々のイメージするラインを忠実にトレースしていく。3回目の1本目では、手塚選手が3コーナーをミスして3:7、しかし2本目では川畑選手がミスで7:3、まさに鍔迫り合い。


そしていよいよ「これで終わりにします。」と審査員。ここまでの総合評価は、角度に歩のある手塚選手が爪先ほどのリード。タイヤ交換を挟んで臨んだサドンデス4回目、後追いからの手塚選手は、1コーナーがやや浅く、2~3コーナーで詰めたもののアドバンテージ川畑選手。2本目、先行から鮮やかな走りを魅せるも、アドバンテージを稼ぐに至らず、ここで終了。

昨年に続き、記録にも記憶にも残るドラマを演出してくれた手塚選手。
シード勢の背中もすぐそこに見えてきた。
REPORT: Noboru Hirano
PHOTO: Kenji Ichi

