新商品ICE NAVI8が
目指したものは?
商品企画部部長 岸(以下、岸)
今回の開発にあたっては、消費者がどんな性能を求めているかという消費者調査を行いました。
その結果を見ると、一番目に凍結路面での性能、二番目が雪上での性能、ここまでは冬タイヤなので当然ですけど、三番目に長持ちすること、というニーズが明らかになりました。
そのため、今までのスタッドレスタイヤから冬性能、特に凍結路面の性能を上げるのを一番の目標とし、よりタイヤが長持ちするような商品を作ること、性能円を全体的に大きくしていくことを開発の目標にしました。
テストドライバー 中島(以下、中島)
私は、いろいろなシーンでの扱いやすさを重要項目としてあげました。
雪氷性能を上げることはもちろん当然ですが、やはり一方で究極を求めると扱いやすさが減少してしまうことがあって、ある条件ではすごく良いのだけど、ある条件ではすごく滑りやすいとか、快適性能が落ちてしまうとか、そういったことが一般的に起こりがちです。
例えば、アイスでブレーキは止まるけれども山道の凍ってる道のカーブでハンドル切ったら横方向では曲がらないとかそんなことがあってはいけませんし、雪が降ってるシーンや新雪では全然グリップしませんとなっては困ってしまうので、そこでのグリップも追求しています。
一方で、特に本州のユーザーのことを考えると実際の雪道よりは舗装路を運転する時間も長いものですから、そういったところでは快適性の乗り心地ですとかノイズ性能、音がうるさく無いかなとか、あとは舗装路でスタッドレスタイヤって特に高速道路でちょっとふわふわして怖いっていう感覚を持たれる方も多いと思うので、そういったことも出ないように追求していますね。
どのような新テクノロジーが
使われている?
岸
今までのグッドイヤーのスタッドレスタイヤは左右対称のパターンだったのですが、今回のアイスナビ8では初めて左右非対称のパターンを使ったので、それが一番の特徴ですね。
左右非対称パターンだと特にハンドリング性能に効いてきます。タイヤの役割は内側と外側で変わってきますので、ハンドリングはドライだけではなく雪であったり氷であったりにも非対称の方が有利になってきます。
中島
そうですね、車が走っている時って通常はどちらかと言うとタイヤのイン側が面に接地されていて、例えば曲がった時は外側が面に接地するっていうふうに、要するにタイヤの内側と外側とで、使われるシーンが違うんですよね。
なので、今回からは左右非対称パターンでそれぞれに役割を持たせられることで、いろいろな性能を高い所でバランスすることが出来たかなと思っています。
岸
それとトレッドのゴムですが、アイスブレーキの性能では路面への密着性が特に大事になってきますので、より密着性を高める為の特徴として分散シリカ(※2)を採用しています。
それから、トレッドの柔軟性を与えるのに軟化剤を入れ、効果がより長く効くという素材を使っています。それによってアイス性能が上がり、かつ以前より長く使えるという特徴になります。
中島
テストドライバーの立場として言うと、重い車が路面と接地してそのグリップを生み出すのはタイヤ、その中でもトレッドゴムのみですから、このトレッドゴムがより良い新しいものになったのは一つ性能向上の大きい理由になっていると思います。
前のモデル
ICE NAVI 7との違いは?
実際に走行した感想は?
岸
アイスナビ8と前モデルのアイスナビ7の違いですが、先程の話の左右非対称パターンを使っているっていうのが一番大きな違いなんですけど、他にはランド比(※3)をより大きくして接地面積をより広くする、それによって路面との摩擦力をあげることでブレーキ性をあげていますね。
それから、エッジ成分(※4)自体を多くしています。
エッジが多いということはそれによる摩擦力があがりますので、ピッチ数(※5)も大きくなっています。これらによって氷上のブレーキ性能をあげています。
中島
内部構造の設計を細かい箇所で工夫しています。
アイスナビ7はすごくざっくりと言うと「ここは硬くするのがベスト、ここは柔らかくするのがベスト」と部分最適を組み合わせたと言えるような構造でした。
結果として、綺麗でフラットな圧雪であればグリップもハンドリングも非常に良いんですけど、一方で雪が多く降った後に多くの車が走った後のデコボコしたような雪面になると、タイヤが暴れてしまい接地が乱れ、結果的にグリップが低めになったり乗り心地も悪くなったりするシーンが一部ではありました。
一方で今回は「トレッド剛性は高めたから、その分よりしなやかに変形させるにはタイヤ全体をどうデザインするか」という観点で全体最適を意識した構造になっています。
結果的に、そういった悪条件のシーンでもタイヤが暴れずに接地が安定して、まさにいろいろなシーンでのグリップが確保できるようになったというのは、細かく変わったところですね。
岸
また、今回の開発で気をつけていたのはノイズです。
どうしても夏タイヤと同等にはならないんですけど、やっぱりスタッドレスタイヤでもノイズを気にされることがあるので、アイスナビ7と比べるとパターンノイズが下がるように作りました。
中島
そうですね、私はテストでたくさん乗っているものですから、その立場で言うとやはりノイズ性能、パターンノイズ性能って言うのは非常に良くなりましたね。
一方で、冬の北海道でもテストをしましたが、氷上性能、氷上ブレーキ性能も非常に良くなりましたし、氷の一歩手前の圧雪アイスといったシーンでも良くなっていますので、狙い通りの順当な性能進化というのは出来ていると捉えています。
いろいろなシーンで良いようにって作ってきた結果が、想定以上にドライ性能も向上出来ているので結果的にそちらも非常に良かったなって思っています。
どんな人におすすめ?
岸
そうですね、基本的には降雪地向けの、特に厳しい凍結路を走るようなユーザーさんに使っていただきたいですね。もちろん、非降雪地からそういう所にまで長距離で移動するような方にも使っていただきたいと考えています。
グッドイヤーは海外ブランドですが、開発自体は評価も含め日本でやっていますので、日本の道路環境に合うようなタイヤを作っています。なので、是非日本の降雪地の人達にも使っていただきたたいですね。
中島
まずはシビアな雪道を走る方に使っていただきたいと思っています。
例えば北海道のように、冬はずっと圧雪アイスや積雪路がメインになる方には勿論自信を持ってお勧めできますし、本州でもやはり北国の方、特に山間部の同じくずっと雪が降る、積雪があるような所でも全く問題なく使っていただけると思っています。
あと、普段はそこまで雪の降らない非降雪地帯に住んでいたとしても例えばウインタースポーツでスキーリゾートなどに行って、そのスキーリゾート付近でだけ結構シビアな雪道運転をされる方、そういった方にも非常にお勧めできるかなと思います。
スキーリゾート近くの圧雪路や圧雪アイス路でも非常に良く走りますし、そこに至るまでの長い高速道路の移動も非常に快適に安定して走れますので、そういったライフスタイルの方にも非常に強くお勧め出来るタイヤなんですよね。
※1 補修用タイヤ
市販タイヤ(タイヤには新車装着タイヤと市販タイヤに分けられる)
※2 分散シリカ
低温でもやわらかさを失いにくいシリカを従来品より細分化。
注 シリカ:二酸化ケイ素(簡単にいうと石)で、ガラスや珪藻土などに含まれており、カーボンに比べて発熱量が少なく、濡れた路面や凍結路面での摩擦力が高く、温度による硬度変化が少ないといったのが特徴。
シリカは白い粉状のもので、ゴムを補強する特性をもつことからホワイトカーボンとも呼ばれる。
※3 ランド比
トレッドの面積に対してブロック、リブの面積
注 トレッド:地面と接触する部分
注 ブロック、リブ:トレッド面の中の路面に接地する部分
※4 エッジ成分
スタッドレスタイヤには細くて細かい『ミゾ』が切られており、この細かいミゾを【サイプ】と呼び、ブロックにたくさんの切り込みを入れることによってエッジ(角)が作られ、このエッジの数および機能する構造を指す。また、ブロックの縁もエッジ効果がある。
※5 ピッチ
タイヤ周上に配置されたブロックの数。ブロックの大きさを小さくするとピッチ数が増え、トレッドパターンが細かくなり、また、ブロックの大きさと配置を一定ではなくランダムにすると、走行時に発生する周波数を分散させ、全体的なノイズを低減させることができる。