Special Impression
斎藤 聡氏による
オールシーズンタイヤ
インプレッション

VECTOR
4SEASONS GEN-3

Profile

斎藤 聡Satoshi Saito
モータージャーナリスト
ドライビングインストラクター
自動車雑誌編集部員を経て1990年フリーランスモータージャーナリストとして独立。主に自動車専門誌やwebに寄稿。自動車のほかタイヤの解説や試乗記も積極的に行っている。得意分野はクルマの操縦性評価。ジャーナリスト活動の傍らセーフティ・ドライビング・スクールのインストラクターを通して安全運転の啓蒙をライフワークとして位置付け積極的に活動している。
斎藤 聡

初代Vector 4Seasonsの登場

Vector 4Seasonsの登場は大きなインパクトがあった。
日本デビューは2008年だったと思う。ところが、いざ走り出してみると、スルスルと圧雪路を走れ、ハンドルも効けばブレーキも効く。
それまでのオールシーズンタイヤと言えば、夏は節度感がなく、冬道ではグリップが悪い、どっちつかずのタイヤというイメージが強かったかVector4Seasons登場のインパクトは大きかった。
それまでのオールシーズンタイヤとの違いは冬タイヤの認証として広く認められている3ピークマウンテン・スノーフレークマーク(3PMSF)を取得し、ウインタータイヤとしての性能を底上げしたことも支持を得た理由の一つだったのだろう。
まもなくオールシーズンタイヤは欧州で爆発的に人気を博し「オールシーズンタイヤ」というカテゴリーが確立するまでに急成長した。
その火付け役となったVector 4Seasonsは実質的なジェネレーション2となるVECTOR 4SEASONS Hybridを経て、VECTOR 4SEASONS GEN-3に進化した。今回そのVECTOR 4SEASONS GEN-3に試乗する機会を得たのでレポートしようと思う。

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VECTOR 4SEASONS GEN-3
の進化

試乗してもっとも強く感じたのは圧雪路でのグリップ性能が従来モデルと比べ数段よくなっていること。それから直進付近の手応えが明瞭で適度に引き締まった操舵感があることだ。

前者はもちろん冬道でより安心して走れるようになったということであり、後者は夏の舗装路でサマータイヤに引けを取らない操縦性を手に入れたということだ。つけ加えると静粛性も大きく進化している。 雪上のグリップ力向上に関してまず感じたのは、コンパウンドが従来よりも低温時に仕事をしている…つまりゴムの柔軟性が保たれてグリップ性能を引き出しているように感じたこと。経験則による印象だが、ゴムが硬いとグリップと滑りの境目が唐突に変わる感覚があり、ゴムの柔軟性が増すほどグリップから滑りに移るときの感触に粘る感覚が増してくる。

GEN-3はHybridと比べ、粘る感覚が増して圧雪路面にエッジを立てるだけではなくゴムが路面をとらえているような感触があるのだ。たぶん、コンパウンドの低温特性を改良することにより雪上グリップ性能の底上げをしたうえで、新トレッドデザインによって、さらに雪上性能を高めているのだろう。

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雪道との接地イメージ。
トレッド中央部に大型のサイプを配置し、接地時に、その大きなサイプが多くの雪を排出。さらにサイプ交差点の開口部が広がることで排雪性能が向上し、高い雪上グリップ力を実現。

トレッドデザインは、V字デザインを踏襲しているもののデザインは大きく変わっている。トレッドセンターのリブ(縦のブロック列)がなくなり単純なVパターンになっているのだ。注目したいのは、トレッド中央に向けてV字パターンが微妙に角度をつけているところ。
実はこの角度はハンドルの手応えに大きく影響するところで、今回試乗した印象と照らし合わせると、雪上で真っ直ぐ走っているときの直進感や、ハンドルを切り出した時の明瞭な手応えにつながっているのだと思う。

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GEN-3のトレッドデザイン。中央に向けてV字の角度が大きくついている。

もうちょっと細かくみるとハンドルを切り出すとグイッと手応えが出るのではなく、すごくプログレッシブに手応えが立ち上がってくる。直進状態からハンドルを切り出した時、ある程度のスリップアングル(タイヤがグリップを発生するのに必要なわずかな横滑り)からは明瞭に手応えが出てくるが、それ以下の微細なスリップアングルではプログレッシブに=穏やかに手応えが立ち上がってくる。実はこの感触が雪道で過敏な応答感を作らず、それでいてカーブでははっきりした手応えを作り出しているのだろう。

雪上でも
安心感のあるグリップ

また、タイヤの周方向に対して直角に数多くの短いサイプが入っているのも特徴の一つ。 ブロックの配置によってサイプを入れる角度を変えるやり方はよくあるが、ストレートに回転方向に対して直角に角度をつけているのは珍しい。純粋に縦のトラクションとブレーキ性能を、ひっかき効果を増すことで高めようということなのだろう。

実際のところ、トレッドコンパウンドと、トレッドデザイン、サイプの効果がどのくらいの割合で効いているのかは判らないが、印象として1ランクから2ランクくらい雪上でしっかりグリップし、ハンドルが効き、ブレーキが効くようになったと感じた。
これまで雪に降られても「気を付ければ問題なく走れるだろう」だったものが、「安心して走ることができる」印象へと変わった。
また、グリップ性能や手応えが進化したことは、実際にクルマに履かせたときの安心感に寄与していると思う。
しかも新トレッドデザインの効果は、グリップのいいドライ路面では、ハンドルの節度感やハンドルを切り出していった時のつながりのいい手応えにつながっているので、乾燥した舗装路を走っているときのドライブフィーリングもよくなっている。

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雪道でも安心して走ることができるように、従来商品から進化している。

全体的な印象

全体的な性能面から受けた印象として、VECTOR 4SEASONS GEN-3 は一年を通して安心快適に履いていられるオールシーズンタイヤへと進化していると感じられた。
今回、新たなモデルが追加されたことで、グッドイヤーが扱うオールシーズンタイヤとしては、スタンダードモデルであるVECTOR 4SEASONS Hybrid、最新の技術によって更なる進化を遂げた高性能オールシーズンタイヤのVECTOR 4SEASONS GEN-3、SUV向けのGEN-3 SUV 、そして商用車向けのVECTOR 4SEASONS CARGOと、幅広いニーズに対応可能なった。
つまりは、より多くのユーザーへ受け入れられ易い体制が整ったと言えるだろう。

幅広い車種に対応する
充実のラインアップ

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